第1回 心に残る卒業アルバム エピソード発表

優秀賞

開けば会いたくなる。

ペンネーム: 眞部 アビル さん

大学の卒業を前に、一人暮らしの部屋に届いた1通のハガキ。卒業アルバム購入申込書だ。

「卒アルねぇ。」と、大学時代を振り返ってみる。付き合っていた彼氏に振られ、サークルにも顔を出しにくくなった。辛かった就職活動。
つまらない思い出ばかり頭をよぎった。忘れたい思い出のなんと多いことか…。
「思い出したいような思い出なし!」
と、申込ハガキはそのままゴミ箱へ。
そして私は大学を卒業した。

半年後、新生活で忙しい日々。新しい友人に囲まれて、それなりに楽しい毎日。
そんな時、注文していないはずの卒業アルバムが、母から私宛に届いた。
ビックリして実家に電話すると、
「お母さんが頼んどいたの。だって記念じゃない?」
と母。
購入申込のハガキは、実家にも届いており、母がこっそり買っておいてくれたのだ。

恐る恐るアルバムを開き、ページをめくる。数年前の自分は初々しくてどこか恥ずかしい。お化粧に慣れていない入学式。はしゃくバスケットサークルの仲間。少しおすまししたゼミの集合写真。誰かのお誕生日会の写真。袴姿の卒業式。
そこには確かに笑ってる自分の写真が何枚もあった。
なんだ。楽しいこともいっぱいあったんじゃん、私。
母が私が写ったページに付箋を貼ってくれている。一番太っていた時期のページには付箋がつけられておらず、母でも気づかなかったのかなと笑えた。

卒アルが楽しかった思い出を思い出させてくれた。
その時はつまらないと思っている毎日も、後で見ると意外と楽しいことがいっぱいだった。
スマホには「久しぶり。卒アル見た?」と友人からのメール。
久しぶりにみんなに会いたくなった。
久しぶりに大学の友人と集まり、みんなで卒業アルバムを見ながら笑った。

卒業から10年。今でも卒業アルバムを開くとみんなに会いたくなる。
あの頃の思い出も新しい思い出も作ってくれるアルバム。
卒業アルバムがあってよかった。
お母さん、ありがとう。